彼女を10日でオトします

 俺の声は、意外にも震えていた。

 状況からすれば、震えて当然なのかもしれない。
 それでも俺は、強い口調で発言したつもりだった。

 目を泳がせる貴史ちゃんが「それは……」と言葉を濁す。

 勝った、とは思えなかった。
 俺は、生まれて初めて『勝ち負けのない』言い合いをしているんだ、と頭の中に僅かに残っている冷静な部分で分析する。

 これは、勝負なんかじゃないから。
 いくら思いの丈を競っても、仮にそれが俺の方が強くても、キョンが俺のものになるとは限らない。

 貴史ちゃんに対する想いをさらに強くするかもしれないし、他の野郎を好きになるかもしれない。

 でも、なんでなんだろう。

 俺にとって無利益なこの言い合いが、苦しくはあっても、不毛なものだとは思えない。不思議と得体の知れない暖かさが込み上げくる。

 だからかもしれない。

「ちゃんと失恋させてやってよ。
なあ、貴史ちゃん、お願いだよ」

 と、俺が貴史ちゃんに頭を下げたのは。