彼女を10日でオトします

「追っかけて、なに?
抱きしめて、キスして慰める?」

 貴史ちゃんは眉毛をぴくりとさせて瞳を見開く。

 自分の口からでた声の温度の低さに、俺は今、どんな顔をしているんだろう、という疑問がふと湧いた。
 それを意識の端っこに押しやって言葉を続ける。

「そのまま押し倒して、愛してあげる?」

 授業中の校内はとても静かで、貴史ちゃんが息をはあっと吸う音さえ聞こえる。

 俺の視界は限りなく狭く、貴史ちゃんの瞳だけを見とめる。

 貴史ちゃんの意識の中に顔を突っ込んでいるような感覚が襲ってきて初めて、貴史ちゃんを挑発しているんだなと気づいた。

 挑発……とは違うかもしれない。
 俺は、貴史ちゃんの答えを知っている。そんなのわかりきってる。

 それなのに、貴史ちゃんにこんな質問を投げかけている俺は、意地悪を言っているんだ。

 そうだ。俺は、悔しいんだ。

 俺がキョンに対して感じている激情を伴った『好き』とは別物の、安穏な『好き』でキョンを繋いでいる貴史ちゃんに少なからず怒りを感じているんだ。

「そんなことできるわけないだろ。俺には燈子がいる」

 随分ときっぱりした言い方だった。
 日本刀で斜に刃を入れた竹の切り口みたいな滑らかさと鋭さを含んでいた。

「だったら追っかける資格ねえよ。
キョンがさ、どんな気持ちでずっと貴史ちゃんを見てきたと思ってんだよ」

 貴史ちゃんを見つめるキョンの顔が頭に浮かぶ。
 痛い。苦しい。吐き気がする。

 心臓を繋いでいる管がぶちぶちと千切れて、口から心臓を吐き出してしまいそう。

 キョンだって。
 燈子さんを見つめる貴史ちゃんを見て、キョンだってこんな気持ちを抱えていたに違いない。ずっと、長い間。

「キョンはどんな気持ちで好きって言ったと思ってんだよ」