彼女を10日でオトします

「響ちゃんっ!!」

 キョンに続いて出て来たのは、言わずもがな貴史ちゃん。
 その声が廊下に響く。

 必死の形相のお手本と言えるような表情でキョンが駆けて行った先を見つめる。

 いいのかねえ。教師が授業中に大声出して。

 なんて考えながら突っ立ってる俺には気付かない様子で、駆け出そうとする貴志ちゃんの白衣の襟をタートルネックのセーターごと掴んだ。

「どっこ行ーくの?」

「っぐえ!」

 俺の問いに、振り向きざまに腕を振り上げ掴んでいた俺の手を払う貴志ちゃん。

「た、たすくっ!! お、お前!」

 これでもかと狼狽する貴史ちゃんは、俺を認識した途端、後ろに飛びのいた。

 そういう反応も嫌いじゃないけれど、俺、化け物じゃないのよ。
 ちょっと傷つくじゃない。

「貴史ちゃん、どこ行く気?」

「やっぱりお前の仕業か!!」

「人聞きが悪いね。
それより、どこに行くつもりなのよ」

 貴史ちゃんは、怒り心頭といったぐあいに、顔を真っ赤に色づけて目を剥いた。

「どこって、響ちゃんを追い掛けるんだよ! 当たり前だろ」

「追っ掛けてどうすんのよ」

 俺の言葉に、貴史ちゃんの動きが止まった。
 貴史ちゃんだけ時間が止まったかのように。