彼女を10日でオトします

「貴兄のわからずや!!」

 と、怒声が廊下にまで響いてきたのは、煙草なんかやめなきゃ良かったと、本気で後悔していたときだった。

 キョンの声に一瞬で思考回路が停止する。

「私が聞きたいのは、そんな理屈じゃない!!
男だったら、私の気持ちぐらい正面から受け止めなさいよ!」

 そして、一拍置いて、キョンはさらに続ける。

「そんなんだからね、お姉ちゃんの尻に敷かれるのよ!!」

 そんな身も蓋も無い発言が聞こえるや否や、保健室の扉が勢い良く開いた。

 唖然とする俺の目に写ったのは、眉を吊り上げ歯を食いしばった仁王立ちのキョン。

 キョンは俺を見つけた途端、俺の瞳を力強く見据えて――。

 涙を零した。

 白い喉を見せて震える唇で空気を大きく飲み込む。
 ブレザーの腕で涙を雑に拭うと、くるりと振り返った。

「貴兄の弱虫っ!」

 保健室の中にいるであろう貴史ちゃんに怒鳴りつけた。

 そしてキョンは、俺の前を走り抜けた。
 みつあみを右へ左へ大きく揺らして。