彼女を10日でオトします

「なんなのよ、たすくさんは」

 キョンちゃんは、独り言のように吐き捨てた。

「キャンペーンの一環だよ」

「貴兄に告白するのが!?」

 うわ。すっごい怒ってる。

「そう」

「貴兄を困らせるだけじゃない」

 キョンは、なおも、どすどす。階段を下りる。

 最後の一段を降りたところでキョンの腕を掴んで、ぐるり、振り向かせた。

「困らせてやれよ。一回くらい困らせたってバチ、あたらねえよ」

 キョンは、俯いた。たぶん、俺に返す言葉をさがしてる。
 俺が掴んだままのキョンの腕から、みるみる力が抜けていくのがわかった。

「キョン!! ぶつかってこいよ。
そんでフラれちまえ、キョンなんか。
だいたいさあ、何にそんな遠慮してんのよ」

 ぱっと、顔が上がる。

 キョンは、眉尻を下げて、眼鏡の下の瞳を潤ませた。
 噛みしめている唇が小刻み震えている。

 やばい。「行くな」って言葉を必死で飲み込んだ。
 今すぐ、ここで、抱きしめてしまいたい。「嘘だよ、伝えなくたっていい」って言えたら、どんなに楽だろう。

「燈子さんに遠慮してんの?
んなもん、好きになっちまったんだから仕方ないじゃん」

 自分の声じゃないみたいだ。