彼女を10日でオトします

 たすくさんが、マガジンラックの料理本を片っ端から頭にいれている間、私は、後片付けに専念した。

 その間、たすくさんは無言で。
 いつも、何かと喋っているたすくさんだから、不思議な感じがした。

 洗剤の泡に包まれたお皿を水道の水にくぐらせながら、私は考える。

 なんでも記憶してしまうって意味を。

 流れ落ちる泡が排水溝に吸い込まれていくように、誰にだってある悲しい記憶を綺麗さっぱり消すことはできない。

 それって、どんな感じなのだろう。どんな気持ちなのだろう。

 ああ。もどかしい。
 数字として、見えてしまえば楽なのに。
 考えることなんて、しなくていいのに。

 洗い終えて立てられたお皿に視線を送りながら、水を止める。
 こんな風に洗われてリセットされず、汚れに汚れを重ねるみたいに、つらいことにつらいことを重ねるって、きっと、とっても……。

「ふぬぬぬ。終わったぜぇぃ」

 振り返ると、たすくさんは座ったまま、両手を天井に突き上げて伸びをしていた。

「キョン? 難しい顔して、どったの?
あ、やっと俺に惚れた?」

 それなのに、こうやって、いつもいつも笑ってる。
 どうして、たすくさんは、笑えるの?