ぴたりと閉められた保健室の扉に手をかけて、一時停止。

 三発の覚悟。……やっぱり、タコ殴りを覚悟しておこう。

 ふう。手に力を込めてひといきに扉を開けた。

 力の加減がうまく出来なかったせいで、可哀相な扉ちゃんは、柱にぶつかり反動でレールを滑って戻ってくる。

「貴史ちゃん、ごめんなさい!!」

 俺ってこんなに体柔らかかったっけ? と一瞬思う。
 それくらい、深く頭を下げた。時計で言うと4時半の角度。

「部屋が冷えるからさっさと閉めろ」

 低いバリトンボイスが、俺の頭に降りかかる。
 静かな声が震えている。

「は、はい」

 顔を上げて、後ろ手で扉をしめる。

 ひいっ!!

 部屋の奥のデスクに座っている貴史ちゃんの強張った顔の下には、右手によって真っ二つにへし折られたボールペンが……。

「たすく、俺は言ったよな?」

「はい」

「響ちゃんを傷つけるなと」

「はい」

 た、貴史ちゃん……当たり前だけど、バリバリ本気モードだ……。