「のどかさんに謝るべきだと思う」
ダン、ダン、と硬いバスケットボールが床にぶつかり跳ね返る音、滑ろうとする体育館履きにワックスが抵抗する甲高い音が、鉄の扉に阻まれて微かに聞こえる。
この至近距離で顔の輪郭すらぼやけて見える暗闇。こっくりとした濃密なカラメルソースの中、キョンの瞳は力強く、光を放っているようにさえ見える。
それは、意思の塊、とでも言うのだろうか。
否定は出来ない、何が何でも聞かなければならない、とやや脅迫じみているような気さえしてくる。
この瞳の前では「どうして?」と訊くことすら野暮なのだ。きっと。
キョンは、数回、残像を残してまばたきをし、そんな俺の気持ちを感じたのか、再び口を開いた。
「たすくさんにとって……んー、なんて言うのかしら、許せないことが当たり前でも、のどかさんにとって見れば、とても大切なものだってあると思うの」
視線が強すぎて、眩しすぎて、俺は、目を逸らしてしまった。
目の前で小さく動く唇を眺めるのが精一杯だった。
ぼーっとしてきて、自分の頭が揺れているのがわかる。
「それを認めてあげて。
たすくさん、『俺は俺』であるように『のどかさんはのどかさん』であってもいいんじゃないかしら」
のどかはのどか。
俺の気持ちや考えをのどかに押し付けるな、と暗に言ってるんだよな、キョンは。
わかる、わかるよ。本当はわかっていたんだ。
のどかがアイツのことを憎むことができないという事。のどかは、優しいやつだから。
のどかはのどか、か。
キョン、でもそれって……。
「難しいよね、すごく……。キョンのさ、言うとおりなんだけど、ね」
ダン、ダン、と硬いバスケットボールが床にぶつかり跳ね返る音、滑ろうとする体育館履きにワックスが抵抗する甲高い音が、鉄の扉に阻まれて微かに聞こえる。
この至近距離で顔の輪郭すらぼやけて見える暗闇。こっくりとした濃密なカラメルソースの中、キョンの瞳は力強く、光を放っているようにさえ見える。
それは、意思の塊、とでも言うのだろうか。
否定は出来ない、何が何でも聞かなければならない、とやや脅迫じみているような気さえしてくる。
この瞳の前では「どうして?」と訊くことすら野暮なのだ。きっと。
キョンは、数回、残像を残してまばたきをし、そんな俺の気持ちを感じたのか、再び口を開いた。
「たすくさんにとって……んー、なんて言うのかしら、許せないことが当たり前でも、のどかさんにとって見れば、とても大切なものだってあると思うの」
視線が強すぎて、眩しすぎて、俺は、目を逸らしてしまった。
目の前で小さく動く唇を眺めるのが精一杯だった。
ぼーっとしてきて、自分の頭が揺れているのがわかる。
「それを認めてあげて。
たすくさん、『俺は俺』であるように『のどかさんはのどかさん』であってもいいんじゃないかしら」
のどかはのどか。
俺の気持ちや考えをのどかに押し付けるな、と暗に言ってるんだよな、キョンは。
わかる、わかるよ。本当はわかっていたんだ。
のどかがアイツのことを憎むことができないという事。のどかは、優しいやつだから。
のどかはのどか、か。
キョン、でもそれって……。
「難しいよね、すごく……。キョンのさ、言うとおりなんだけど、ね」



