俺ってさ、とどのつまり、コットンの言うとおりなんだと思う。
 最低ってやつ。

 言い訳じゃないけど、人にはさ、どうしても許せないことってあると思うのよ。
 俺の場合、それがアレ。

 こう言っちゃなんだけど、可愛い女の子とナニしてる時だって、俺、結構冷静なんだぜい?
 でもさ、やっぱり、アレだけはダメなのよ。頭ん中が、カーっと真っ赤になって、わけわかんなくなっちゃう。

 でもさ、やっぱり最低よね。
 キョンに怪我させちゃったわけだし。

 我に返って、すぐにみっちょんに電話して病院に連れてってもらったわけだけど、キョン、ずっと無言。
 病院に行く途中の車の中でも、キョン家に送るときも。

 まあ、そうだわね。
 あんな形で、『戸部さんとこの坊ちゃん』を暴露しちゃったわけだし。

 包帯でぐるぐる巻きにされた手、見て、「ごめん」としか言えなかった。
 
 キョン、何て思ったんだろう。

 やっぱり、俺のこと嫌いになったかな?
 別れ際、すっごく悲しい目、してた。


 散らかしっぱなしの部屋は、なぜかいつもより広く感じて。
 いつのまにか、夜が明けてしまった窓の外は、いつもより白い。

 結局、眠れなかったなあ、とぼんやりした頭の中でゆっくり呟いた。

 はあ、今日は、貴史ちゃんに一発ぶん殴られる覚悟しておかないと。
 あ、いや、三発は覚悟しておこう。

 一夜明けてなお、ジンジンする左頬をさする。
 ひ、左は避けてもらおう。
 燈子さん、まるで手加減無しなんだもん。

 『響ちゃんになんてことしたのよ!!』

 バチンと脳みそにガツンときた燈子さんのビンタ。

 この痛みは、燈子さんが『響ちゃん』を大切にしている証拠。
 キョンは、愛されて育ったんだなあ、ってひしひしと感じた。

 愛されて育つって、どんな感じなんだろう?