彼女を10日でオトします

「こういう時だけ『にいちゃん』ってか?」

「お願い……やめて……。
最後の……、最後の一枚なの……」

 か細く、消え入りそうな声で、のどかさんが呟く。

 さいごのいちまい……。

「随分、大袈裟だね。
ただの燃やし忘れでしょ?
それとも、のどか……まさか、隠してた、ってことはないよね?」

 のどかさんの頼りない肩が、小さく跳ねた。

「にいちゃん……お願い……」

「こんなもの、俺達には必要ない」

 たすくさんは、ライターの蓋を開けた。
 キン、と甲高い独特の金属音が鼓膜を刺激する。

 たすくさんの親指が、ライターの腹を擦ると同時に、火がともった。

 写真の角を温かい色が染める。

 か……ぞく……。

 揺らめきながらシンクの中へ落ち行く。
 
 その瞬間、私は床を蹴って走り出していた。私の目には、スローモーションで身をくねらす写真しか映っていなかった。