彼女を10日でオトします

「それに、俺のことはこれから教えるから。のどかは、先に食堂行ってて」

「へいへい」

 戸部たすくは、私の腕を掴んだ。

「覗いちゃダメよ。兄ちゃん、今からエッチなことするんだから」

「へいへい」

「キョン、こっち」

 とろける笑顔を浮かべる戸部たすくの手を振りほどくことができなかった。

 私を掴んでいる、手、震えてる……。

 掴まれた腕に伝わる小刻みな振動が私の喉を詰まらせ、明るい笑顔が私の思考を奪った。

 引っ張られるまま、入った部屋はこの旅館のような建物には、似つかわしくない洋室だった。

「たすくさん……?」

 その部屋の扉が閉まるやいなや、深く息を吐く戸部たすくに、恐る恐る声をかけた。

「俺ね、今、すっごい緊張してるの」

 戸部たすくは、苦笑い、といった感じの表情。「エッチなこと」は、してくる様子はないわね。
 何でこの人は……。無理矢理笑わなくてもいいのに。

 なんだか、せつない心地になってしまい、視線を外して部屋を見渡すことにした。

 かなり大きい部屋。ハリーポッターの食堂式の長いテーブルと、ざっと20脚の椅子。
 中でも一番目を引くのは……。