彼女を10日でオトします

「兄貴、飯食った?」

 回廊(もう、こう言ったっていいと思う)を歩きながら、のどかさん。

「食ってないけど。
のどかさあ、その男みたいな口の利き方、そろそろやめなよ」

「兄貴こそ、親父避けるのやめれば?
親父がいるか、いないか、いちいちあたしに確認すんなよ」

「しょうがないじゃん。あの堅物と俺が仲良くできるわけないじゃんね、キョン?」

 だから、なんでコイツは、私に同意を求める!

「知るかあ!」……とは、いくら相手がたすくさんでも、のどかさんの手前言えない。

「たすくさんは、私のこと、何だと思ってるのかしら?
私、たすくさんのこと、何も知らないのよ」

「えー? キョン、5年後には、俺のお嫁さんでしょ」

 はあ?
 さも当たり前のように、なあに言ってるのよ、って肩すくめないでいただけます?
 しかも、何、その明確な数字は。

「そんな嫌そうな顔しないでよお。戸部響子。めちゃめちゃいい感じじゃないの」

「冗談きついわよ」

「冗談で家族、紹介したりしないよ、俺は」

 はた、と立ち止まって振りむく戸部たすく。

 まっすぐ、強い、アイスピックみたいに鋭い瞳に、視線を奪われてしまった。

 卑怯よ!
 いきなりそんな真剣な目、されたら私……ほらっ、もう!