彼女を10日でオトします

「お二人、兄妹なの?」

「そう。俺に似て可愛いでしょ。
妹の、のどか」

 そう言われて見れば、顔は似てるわ。

「初めまして、こんな兄貴をもって可哀相な妹ののどかです」

 微笑みながら、軽く頭を下げるのどかさん。なんというか、優雅な仕草。

「こちらこそ初めまして。たすくさんの顔見知りの在原響子です」

「っておーい。
俺、泣いちゃうよ?」

「どうぞ、ご勝手に」

 と、私とのどかさんの声が重なった。

「それにしても、ご兄妹だったのね。私、てっきり、彼女かと思ったわ」

「やっだぁ、キョンさん、止めて。
そんなに趣味悪くないって。
私は、キョンさんが兄貴の彼女かと思ったよ」

「冗談。私だってそんなに趣味悪くないわ」

「俺、ホントに泣きそう。寒いし。特に心が。
早く中入ろうよ」

 そう言って、とぼとぼ門に向かう戸部たすく。

「そうだね。つーか、兄貴、ダウン着てる癖に寒いとか言うな」

 のどかさんも後に続く。

 えっと……。

「た、たすくさん! ちょっと待って!
中って――」

 思わず掴んでしまった反対の腕で戸部たすくは「ん」と言いながら、前方を指差した。もちろん、ご立派な門方面を。

「俺の実家」

 実家って! 妹ののどかさんが、そこから出て来たんだから、まあ、考えればそうなんだろうけど……実家って!

 こんなご立派な――。

「キョン、昨日、俺のこと知りたいって言ってたじゃん。
早くおいで」

 にっと白い歯を見せて笑う戸部たすく。

 いや、ちょっと待って!
 あんたって、何者なのよ!?