しばらく車内で、際限なく伸びてくる手と顔と格闘していると、突然、「あ」と敵が声を上げた。
「運転手サン、その信号の次、左折ね」
一本道に入っただけで、なにやら凄い世界に迷いこんだみたい。
「そうそう、で、次右折」
何ここ……立派な構えの家が多すぎない?
「次の十字路、左に曲がったらストップね」
おそらく、高級住宅街と呼ばれるようなところだと思う。
そりゃあ、ストップよ。
だって、曲がった先は、行き止まりだもの。
行き止まりというか、フロントガラスいっぱいに、ものすごい門なんだもの。
戸部たすくは、ポケットから裸のお札をとりだして、運転手さんに渡す。
「ああ、いいよ。うるさくしちゃったお詫びに取っといて」
すごい発言を聞いたような気がする。
支払いの半分は、『お詫び』?
タクシーってこういうものなの?
「キョン? 何してるの、早く降りなよ」
「う、うん」
ねえ、なに?
この門の向こう側は遊園地なんです、ってオチ?
逆にそうだとありがたいんだけど……。
降りた先、目の前にそびえる門。
それは木製で、深い色合いから年期を感じる。
中を窺おうにも、門は松のてっぺんがようやく見えるほどの高さで。
その門の右脇に小さな(といっても一般的なサイズ)扉があって、そこからひょっこりと女の子が出てきた。
年は、そうね、中学生くらいかしら。
栗色の髪の毛は肩口でふわふわしていて、それと同じ色の瞳がくりっとしていて。
なぜか、ジャージ。
「おっそーい」
腰に手を当てて、頬をぷーっと膨らませて……あれ? デジャヴ? どっかで見たことあるような。
「のどかーーー!」
声の方向を見るともう誰もいなかった。
門に視線を移すと、その少女に覆いかぶさる戸部たすくの背中が目にはいった。
おまわりさーん、そこに痴漢いますけど。
「運転手サン、その信号の次、左折ね」
一本道に入っただけで、なにやら凄い世界に迷いこんだみたい。
「そうそう、で、次右折」
何ここ……立派な構えの家が多すぎない?
「次の十字路、左に曲がったらストップね」
おそらく、高級住宅街と呼ばれるようなところだと思う。
そりゃあ、ストップよ。
だって、曲がった先は、行き止まりだもの。
行き止まりというか、フロントガラスいっぱいに、ものすごい門なんだもの。
戸部たすくは、ポケットから裸のお札をとりだして、運転手さんに渡す。
「ああ、いいよ。うるさくしちゃったお詫びに取っといて」
すごい発言を聞いたような気がする。
支払いの半分は、『お詫び』?
タクシーってこういうものなの?
「キョン? 何してるの、早く降りなよ」
「う、うん」
ねえ、なに?
この門の向こう側は遊園地なんです、ってオチ?
逆にそうだとありがたいんだけど……。
降りた先、目の前にそびえる門。
それは木製で、深い色合いから年期を感じる。
中を窺おうにも、門は松のてっぺんがようやく見えるほどの高さで。
その門の右脇に小さな(といっても一般的なサイズ)扉があって、そこからひょっこりと女の子が出てきた。
年は、そうね、中学生くらいかしら。
栗色の髪の毛は肩口でふわふわしていて、それと同じ色の瞳がくりっとしていて。
なぜか、ジャージ。
「おっそーい」
腰に手を当てて、頬をぷーっと膨らませて……あれ? デジャヴ? どっかで見たことあるような。
「のどかーーー!」
声の方向を見るともう誰もいなかった。
門に視線を移すと、その少女に覆いかぶさる戸部たすくの背中が目にはいった。
おまわりさーん、そこに痴漢いますけど。



