彼女を10日でオトします

「私だって、あなたに負けないくらい嘘つきよ」

 戸部たすくは、顔を上げた。
 予想通りの驚いた顔。

「えー、キョンって嘘つけるのお?」

「失礼ね。私なんか、物心ついたときから嘘ついてるんだから」

「ずーっと?」

「ずっと」

「それって、貴史ちゃんをすきなこと?」

「まあね」

 すねた様子で、窓に向かって「ふうん」と呟いた戸部たすく後頭部に「それだけじゃないけど」とすぐに声をかけてしまったのは、どうしてなんだろう。

 その疑問は深く追求しちゃいけない気がして、まっさきに頭の外へ追い出したけれど。

「キョン、俺、やっぱり、今すぐちゅーしたい」

 はあ?

「やっぱりってなんなのよ」

「頭の中で多数決とってみたの。
そしたら、49対1。
圧倒的多数で『今すぐチュウ』が可決されました」

 あなたの頭の中には、50人も何が住みついてるんですか。もしくは、50匹。

「絶対お断り」

「キョンちゃん、ミンシュシュギのルール知らないの?
ちゃんと則りなさい」

「何が民主主義よ。たすくさんのさじ加減じゃない」

「貴史ちゃんには、簡単に初ちゅー奪わせた癖に。えこひいき反対」

「意識自体無いころの話じゃでしょ」

「むー。今日の目標は、キョンの唇!
これで決まり!」

「あら、そう」

 今日の目標は、唇の死守。
 これで決まり。