乗用車に乗ったのは、とても久しぶり。
電車を除けば窓の外を流れる景色は、通学路、バスから見えるものしか知らないに等しい。
世界は、こんなにも広い。
しばらく走った窓の外は、もう、知らない世界だった。
毎日、学校と家の往復。
買い物は、電車で新宿。新宿の街だって、めったに駅から出ないからほとんど知らない。
しかし、その生活に不満なんて感じたことは無かったのも確かで。
「ねえ、キョン。
ちょっと、俺とお喋りしない?」
ほぼ二人っきりの密室で、無言というのもおかしなことのように思える。
なんだか、戸部たすくの術中にはまっている感は否めないけれど。
「なに?」
隣に座っているのに、なんだか遠いような気がする。
ああ、そうか。
最後にタクシーに乗ったとき、私は、貴兄の膝の上だったんだ。
その隣におねえちゃんが座って、その向こうは貴兄のおばさん。
助手席には、おじさんが座ってた。
あの時は、二人じゃなかった。
「俺ね、キョンに謝らなきゃいけないことが2つあるんだあ」
何を今更。
2つどころか、行動全てに謝ってもらいたいものだわ。
「どうぞ」
シートの上に乗せた戸部たすくの指先に力が入ったように見えた。
「俺って基本的に嘘つきなんだよね」
……何のカミングアウトですか。
電車を除けば窓の外を流れる景色は、通学路、バスから見えるものしか知らないに等しい。
世界は、こんなにも広い。
しばらく走った窓の外は、もう、知らない世界だった。
毎日、学校と家の往復。
買い物は、電車で新宿。新宿の街だって、めったに駅から出ないからほとんど知らない。
しかし、その生活に不満なんて感じたことは無かったのも確かで。
「ねえ、キョン。
ちょっと、俺とお喋りしない?」
ほぼ二人っきりの密室で、無言というのもおかしなことのように思える。
なんだか、戸部たすくの術中にはまっている感は否めないけれど。
「なに?」
隣に座っているのに、なんだか遠いような気がする。
ああ、そうか。
最後にタクシーに乗ったとき、私は、貴兄の膝の上だったんだ。
その隣におねえちゃんが座って、その向こうは貴兄のおばさん。
助手席には、おじさんが座ってた。
あの時は、二人じゃなかった。
「俺ね、キョンに謝らなきゃいけないことが2つあるんだあ」
何を今更。
2つどころか、行動全てに謝ってもらいたいものだわ。
「どうぞ」
シートの上に乗せた戸部たすくの指先に力が入ったように見えた。
「俺って基本的に嘘つきなんだよね」
……何のカミングアウトですか。



