彼女を10日でオトします

「ねえ、俺、そんなにイイ男?
じいっと見つめてくれちゃって。照れるじゃないの」

 は!

「み、見つめてなんか!」

 やだ、見つめてたわ。

「キョン、お願いだから、そんな目で見ないで?」

 かわらず、ダウンジャケットの中に頭を埋めて見上げる私と、下を向く戸部たすくの視線がカチリと合った。

 どうせ、興奮しちゃうでしょ、とかなんとか言うんでしょ?

「……俺は、俺だよ。
キョンだけには、そういう目で見られたくないな」

 逆さまの戸部たすくは、目を細めて薄く笑った。
 この人、自分の眉間にシワが寄ってるの気づいてないのかしら。

 心臓が縮んでいく。それは、不快な痛みを伴うものだった。 

「何よ。無理に笑うことないじゃない」

 細まっていた目が、スローモーションで元の大きさを超えた。
 
 目の前の赤い唇が、何か言いたげに僅かに開く。
 しかし、待てどもそこから声は発せられず、そのかわりに小さく息を吸い込んだようだった。

 自分でも、いい加減ぶっきらぼうな言い方だと思う。
 でも、仕方ないのよ。

 あんな表情……不意打ちでするほうが、悪いわ。

 ああ、もう。こんなのただの言い訳じゃない。
 慣れてないのよ、人を慰めるのは。私にどうしろっていうのよ……。