「たすくさん」

 キョンは、ガシャンと音を立てて、レジスターのお金が入った引き出しをしまった。

「なあに? キョン」

「さっきの方……」

 キョンは、言葉を詰まらせて、視線を泳がす。

「なによお、キョンちゃん。気になるの?
もしかして、嫉妬? 大丈夫よ、俺、浮気しないから」

「そうじゃないわ」

 きっぱり。
 うーん、ちょっとくらい、やきもちやいてよね。

「さっきの方、少し、危険な暗示が出ていたのよ。
たすくさん、あの方とどういった関係?」

「うーん、難しい質問ねえ。
むかーし昔、お世話になった……や、お世話した、の方が正しいかなあ。
でも、ま、今は、無関係よ」

「そう」

 キョンちゃん、難しい顔しちゃって。シワになっちゃうわよ。

「もう2度と会うことはないだろうね」

 ……親父に関わらなければ。

「そう」

 と、言ったっきり、天井を仰いで、何か考えているふうのキョン。ち、ちょっと、可愛いじゃない!

「ねえ、キョン。
安心させてあげよっか?」

「え?」

 キョンは、ぱっと、目を見開いて俺に視線を戻した。
 いいね、その反応。

「キョンちゃん、俺のこと知りたいんでしょ?
教えてあげる、特別に」