「嫌だわ、たすく。私、もう、ナナじゃないのよ」
ナナさんは、上目使いで俺を見ながら、カップをゆっくりと口に運ぶ。
「店、辞めたんですか?」
カップについた黒みがかった赤い口紅を親指で拭う。
「ええ。たすくがいなくなってから、私、結婚したの。だから、今はもう、サトミよ」
「そうですか。それは、おめでとうございます」
ナナ改め、サトミさんの色気たっぷりの視線に、俺の心は、階段を降りるように着々と沈んでいく。
サトミさんは、身を乗り出す。
腕を組んで、その両肘をテーブルに乗っけた。腕の間から、たわわな胸が押し出される。
「ねえ、たすく。
あなた、まだ“ウリ”やってる?
主婦ってね、退屈なのよ。
だから、ねえ……」
お得意のおねだりポーズで、猫撫で声。
あはは。この人、全然変わってないなあ。
「俺、すっぱり、足あらったんですよ。それに、俺、幸せな家庭をぶち壊すようなマネできませんって」
「あらあ、あなたらしくない言葉ね。
前は、全てをぶっ壊したいって顔に書いてあったのに」
ナナさんは、上目使いで俺を見ながら、カップをゆっくりと口に運ぶ。
「店、辞めたんですか?」
カップについた黒みがかった赤い口紅を親指で拭う。
「ええ。たすくがいなくなってから、私、結婚したの。だから、今はもう、サトミよ」
「そうですか。それは、おめでとうございます」
ナナ改め、サトミさんの色気たっぷりの視線に、俺の心は、階段を降りるように着々と沈んでいく。
サトミさんは、身を乗り出す。
腕を組んで、その両肘をテーブルに乗っけた。腕の間から、たわわな胸が押し出される。
「ねえ、たすく。
あなた、まだ“ウリ”やってる?
主婦ってね、退屈なのよ。
だから、ねえ……」
お得意のおねだりポーズで、猫撫で声。
あはは。この人、全然変わってないなあ。
「俺、すっぱり、足あらったんですよ。それに、俺、幸せな家庭をぶち壊すようなマネできませんって」
「あらあ、あなたらしくない言葉ね。
前は、全てをぶっ壊したいって顔に書いてあったのに」



