「貴兄! いつしたのよ!?」
「ふっふっふ。響ちゃんが生れ落ちたその日だ。あまりの可愛さに……。
響ちゃんがいつか、どこぞの野郎に貰われていってしまうと思ったら、悔しくて」
き、鬼畜! 生まれたての赤子に!
隣の家のお兄ちゃんが、父親みたいなこと考えてんじゃないわよ……。
絶句している私。
隣から、ガタっと物音が聞こえた。隣の机が少しずれている。戸部たすくが立ち上がっていた。
戸部たすくは、無言でスタスタと貴兄が座っているデスクへ向かった。
貴兄の横で立ち止まった戸部たすくは、デスクに右手を置いた。
ギ。金属がきしむ。
一言も喋ってはいけない、というようなオーラが戸部たすくの背中からにじみ出ているような気配を感じる。
そのオーラに従うわけではなかったけれど、私と琴実さん、ヒデさんは、口をつぐんでいた。
息をのむ。
戸部たすくは、もう一度デスクをきしませ、左手を貴兄の後頭部にそっと這わせた。
そして、戸部たすくは顔を傾けて、とても自然な動きで貴兄の顔に顔を近づけていく。
落ちる沈黙。
貴兄と戸部たすくの顔は重なったまま。
カチャン。貴兄の手から離れた箸は、デスクの上で一度跳ね上がり、床へ落ちた。
「キャー! たすく、あんた、男もいけるクチだったの!?」
「たすく! いくら真田センセが女みてーな顔してるからって、おい!!」
騒ぎ出した琴実さんとヒデさんの声に答えるかのように、戸部たすくは、ようやく貴兄から顔を離した。
貴兄は、焦点の合わない目を見開いたまま呆然としていた。
え……、まさか……。
「ふっふっふ。響ちゃんが生れ落ちたその日だ。あまりの可愛さに……。
響ちゃんがいつか、どこぞの野郎に貰われていってしまうと思ったら、悔しくて」
き、鬼畜! 生まれたての赤子に!
隣の家のお兄ちゃんが、父親みたいなこと考えてんじゃないわよ……。
絶句している私。
隣から、ガタっと物音が聞こえた。隣の机が少しずれている。戸部たすくが立ち上がっていた。
戸部たすくは、無言でスタスタと貴兄が座っているデスクへ向かった。
貴兄の横で立ち止まった戸部たすくは、デスクに右手を置いた。
ギ。金属がきしむ。
一言も喋ってはいけない、というようなオーラが戸部たすくの背中からにじみ出ているような気配を感じる。
そのオーラに従うわけではなかったけれど、私と琴実さん、ヒデさんは、口をつぐんでいた。
息をのむ。
戸部たすくは、もう一度デスクをきしませ、左手を貴兄の後頭部にそっと這わせた。
そして、戸部たすくは顔を傾けて、とても自然な動きで貴兄の顔に顔を近づけていく。
落ちる沈黙。
貴兄と戸部たすくの顔は重なったまま。
カチャン。貴兄の手から離れた箸は、デスクの上で一度跳ね上がり、床へ落ちた。
「キャー! たすく、あんた、男もいけるクチだったの!?」
「たすく! いくら真田センセが女みてーな顔してるからって、おい!!」
騒ぎ出した琴実さんとヒデさんの声に答えるかのように、戸部たすくは、ようやく貴兄から顔を離した。
貴兄は、焦点の合わない目を見開いたまま呆然としていた。
え……、まさか……。



