「神楽は、その上にパーカーかカーディガンでも羽織れよ。バイクで走ると夜風が冷てぇからな」
白い半袖フリルのブラウスと茶色のワイドデニムパンツ姿の私に、コウが言う。
「あ、うん」
軽装でいいなら助かる。
自分のタンスの中を思い浮かべ、ピンクのカーディガンを見つける。
「よし、じゃあ行こうぜ」
意気揚々と立ち上がったコウは、ベルトに付けていた鍵を取り外し、指先でくるくると回した。
「うん。カーディガン取ってくるから、シャッター前に集合ね」
「おう」
軽く手を上げ返事したコウと別れ、急ぎで自室へと戻った。
コウのバイクに二人乗りで、やって来たのは繁華街。
すっかり夜の帳の降りたそこは、ネオンが煌めき夜の装いを纏っていた。
学校帰りの学生と買い物途中の主婦に代わり、仕事終わりの疲れた顔をしたサラリーマンと夜の空気を纏った住人達が居る。
艶が煌めき、人間の本能が剥き出しにされたその場所に、私達は足を踏み入れた。
繁華街の中心を少しずれた若者で賑わうその一角に、コウはバイクを寄せると、響き渡った爆音に店の前に居た人達が自然と道を開けた。
こちらに向かってくるざまざまな視線。
コウは気にする事なく停車させると、私の方へと振り返った。
「そこに、バイクを停めてくるから少し待ってられるか?」
「大丈夫」
コウの視線の先にある駐輪場を見て頷き、タンデムから降りる。
「何かあったら直ぐに叫べよ」
「この距離で何かあるはずないよ」
目の鼻の先ぐらいの距離なのに、コウは心配性だね。
「お前は前歴があるからな」
険しい表情でそう言ったコウに、そう言えばアイスクリームワゴンの時もこのぐらいの距離だったと思い出す。
「今日は大丈夫だよ。鬼夜叉はもう無いんだし」
「ククク···そういや、そうだな」
コウ達が壊滅させたんでしょうよ。
「これ、お願い」
ヘルメットを脱いでコウに手渡した。
「いい子で待ってろ」
ポンポンと私の頭をコウが撫でると、周囲で黄色い悲鳴が上がった。
コウはそれを気にするでも無く、私のヘルメットをハンドルに引っ掛けると、バイクを押して駐輪場へと向かった。
コウが離れた事で、値踏みする様な不躾な視線が集まる。
どこに居ても、女の嫉妬は面倒臭いモノだと溜め息を漏らした。
この街での、野良猫人気は半端ない。
そんなチームに今まで入った事のない女が入ったとなれば、そりゃ興味も嫉妬も湧くよね。
私としては別に優越感なんかに浸るつもりはないんだけど、周囲からはそうは見えないってのは、あの3年の女子達でよく分かった。
まぁ、分かったからと言って、私に出来ることは無いんだけどね。
こんな視線にも慣れてきた自分自身の神経の図太さに、結構驚いていたりもする。
取り留めもない事を考えてる間に、コウが走り寄ってきたので、思考はそこで途絶えた。
白い半袖フリルのブラウスと茶色のワイドデニムパンツ姿の私に、コウが言う。
「あ、うん」
軽装でいいなら助かる。
自分のタンスの中を思い浮かべ、ピンクのカーディガンを見つける。
「よし、じゃあ行こうぜ」
意気揚々と立ち上がったコウは、ベルトに付けていた鍵を取り外し、指先でくるくると回した。
「うん。カーディガン取ってくるから、シャッター前に集合ね」
「おう」
軽く手を上げ返事したコウと別れ、急ぎで自室へと戻った。
コウのバイクに二人乗りで、やって来たのは繁華街。
すっかり夜の帳の降りたそこは、ネオンが煌めき夜の装いを纏っていた。
学校帰りの学生と買い物途中の主婦に代わり、仕事終わりの疲れた顔をしたサラリーマンと夜の空気を纏った住人達が居る。
艶が煌めき、人間の本能が剥き出しにされたその場所に、私達は足を踏み入れた。
繁華街の中心を少しずれた若者で賑わうその一角に、コウはバイクを寄せると、響き渡った爆音に店の前に居た人達が自然と道を開けた。
こちらに向かってくるざまざまな視線。
コウは気にする事なく停車させると、私の方へと振り返った。
「そこに、バイクを停めてくるから少し待ってられるか?」
「大丈夫」
コウの視線の先にある駐輪場を見て頷き、タンデムから降りる。
「何かあったら直ぐに叫べよ」
「この距離で何かあるはずないよ」
目の鼻の先ぐらいの距離なのに、コウは心配性だね。
「お前は前歴があるからな」
険しい表情でそう言ったコウに、そう言えばアイスクリームワゴンの時もこのぐらいの距離だったと思い出す。
「今日は大丈夫だよ。鬼夜叉はもう無いんだし」
「ククク···そういや、そうだな」
コウ達が壊滅させたんでしょうよ。
「これ、お願い」
ヘルメットを脱いでコウに手渡した。
「いい子で待ってろ」
ポンポンと私の頭をコウが撫でると、周囲で黄色い悲鳴が上がった。
コウはそれを気にするでも無く、私のヘルメットをハンドルに引っ掛けると、バイクを押して駐輪場へと向かった。
コウが離れた事で、値踏みする様な不躾な視線が集まる。
どこに居ても、女の嫉妬は面倒臭いモノだと溜め息を漏らした。
この街での、野良猫人気は半端ない。
そんなチームに今まで入った事のない女が入ったとなれば、そりゃ興味も嫉妬も湧くよね。
私としては別に優越感なんかに浸るつもりはないんだけど、周囲からはそうは見えないってのは、あの3年の女子達でよく分かった。
まぁ、分かったからと言って、私に出来ることは無いんだけどね。
こんな視線にも慣れてきた自分自身の神経の図太さに、結構驚いていたりもする。
取り留めもない事を考えてる間に、コウが走り寄ってきたので、思考はそこで途絶えた。


