「さぁ、張り切ってテスト勉強を始めま〜す」
制服のブレザーを脱いだ私はシャツの両袖を捲り、目の前にお行儀良く座るメンバーに声を掛ける。
昨日、私の誘拐で立ち消えになってたテスト勉強が今始まる。
溜まり場の大部屋に集まったのは、光とコウを入れて30人程。
谷本さんに声を掛けたら、あれよあれよと言う間に膨れ上がり30人になってしまったので、教える側の人数も急遽増やした。
私、霧生、佐田君、周防君の4人である。
流石に私1人じゃ、30人は見れないよ。
1年生を私と佐田君が、2、3年生を霧生と周防君が担当する事になった。
テスト範囲を聞き、教科書を読み、山を張る。
本当は前年度のテストなんかがあると、傾向を読めるんだけど、無いものは仕方ないので、応用と基本を半分ずつ予想する。
勉強会参加者は、出来ないなりにも真剣に取り組んでくれるので、教えがいはあった。
うちの学校とは進み方も内容も違っていたけれど、そこは気合で乗り切る事にした。
「神楽ちゃん、これってどう解くの?」
「光、ここはね。こうして、こうすれば分かりやすいよ」
上から覗き込むようにして、数学の公式を光のノートに書き込んだ。
「あ、なるほど。凄く分かりやすいよ」
「光は飲み込みが早いから、学校でもしっかり授業を聞いてたら、点数取れるのに」
「だって、先生の話は眠くなるんだぁ」
だからって寝ちゃ駄目だよ。
光が机に突っ伏して寝る姿が想像できて苦笑いを浮べる。
「じゃあ、今日は寝ずに頑張ろうね」
「神楽ちゃんの声なら聞いてても眠くないよ。逆に楽しいし」
愛らしく微笑んだ後、光は自分のノートに向き合った。
よしよし、やる気じゃん。
「光は楽しそうでいいよな。こっちはスパルタだつ〜の」
隣のテーブルからそんな声が聞こえる。
顔を向ければ、コウが不貞腐れた顔で教科書の問題を解いてた。
「俺じゃあ、不満だってのかよ」
苛ついた霧生の声が聞こえ、ガツンと机を蹴った音がした。
「お、おい、机蹴るなよ」
「うっせぇ。早くこの問題解きやがれ!」
「···やってんだろうが」
「ここ、間違ってんぞ」
「はぁ? どう違うんだよ」
「間違いも分かんねぇのかよ」
「お前の教え方が分かりづれぇんだよ」
「うぜぇ」
コウと霧生の言い合いが続く。
向こうはどうやら、本当にスパルタらしいね。
「僕、神楽ちゃんで良かったぁ」
光の心の声が漏れる。
私は思わず吹き出して、コウと霧生の喧嘩腰の勉強風景に肩を竦めた。
こんな感じの勉強会が5日ほど続く事になる。
テスト本番、げっそりした顔を晒したコウに、お疲れ様と思ったのは私だけじゃないと思う。
制服のブレザーを脱いだ私はシャツの両袖を捲り、目の前にお行儀良く座るメンバーに声を掛ける。
昨日、私の誘拐で立ち消えになってたテスト勉強が今始まる。
溜まり場の大部屋に集まったのは、光とコウを入れて30人程。
谷本さんに声を掛けたら、あれよあれよと言う間に膨れ上がり30人になってしまったので、教える側の人数も急遽増やした。
私、霧生、佐田君、周防君の4人である。
流石に私1人じゃ、30人は見れないよ。
1年生を私と佐田君が、2、3年生を霧生と周防君が担当する事になった。
テスト範囲を聞き、教科書を読み、山を張る。
本当は前年度のテストなんかがあると、傾向を読めるんだけど、無いものは仕方ないので、応用と基本を半分ずつ予想する。
勉強会参加者は、出来ないなりにも真剣に取り組んでくれるので、教えがいはあった。
うちの学校とは進み方も内容も違っていたけれど、そこは気合で乗り切る事にした。
「神楽ちゃん、これってどう解くの?」
「光、ここはね。こうして、こうすれば分かりやすいよ」
上から覗き込むようにして、数学の公式を光のノートに書き込んだ。
「あ、なるほど。凄く分かりやすいよ」
「光は飲み込みが早いから、学校でもしっかり授業を聞いてたら、点数取れるのに」
「だって、先生の話は眠くなるんだぁ」
だからって寝ちゃ駄目だよ。
光が机に突っ伏して寝る姿が想像できて苦笑いを浮べる。
「じゃあ、今日は寝ずに頑張ろうね」
「神楽ちゃんの声なら聞いてても眠くないよ。逆に楽しいし」
愛らしく微笑んだ後、光は自分のノートに向き合った。
よしよし、やる気じゃん。
「光は楽しそうでいいよな。こっちはスパルタだつ〜の」
隣のテーブルからそんな声が聞こえる。
顔を向ければ、コウが不貞腐れた顔で教科書の問題を解いてた。
「俺じゃあ、不満だってのかよ」
苛ついた霧生の声が聞こえ、ガツンと机を蹴った音がした。
「お、おい、机蹴るなよ」
「うっせぇ。早くこの問題解きやがれ!」
「···やってんだろうが」
「ここ、間違ってんぞ」
「はぁ? どう違うんだよ」
「間違いも分かんねぇのかよ」
「お前の教え方が分かりづれぇんだよ」
「うぜぇ」
コウと霧生の言い合いが続く。
向こうはどうやら、本当にスパルタらしいね。
「僕、神楽ちゃんで良かったぁ」
光の心の声が漏れる。
私は思わず吹き出して、コウと霧生の喧嘩腰の勉強風景に肩を竦めた。
こんな感じの勉強会が5日ほど続く事になる。
テスト本番、げっそりした顔を晒したコウに、お疲れ様と思ったのは私だけじゃないと思う。


