闇の果ては光となりて

「で、彼女達が言ってた人間に心当たりはありそう？」
「···まぁ、無くは無いけど」
茶色い髪でモデルみたいって言うと···あの人。
霧生と腕を組む彼女の姿が頭に浮かんだ。
まさかね···そんなわけ無いよね。
社会人だと言う彼女が、そんな事をするのかと言われれば、しないような気もする。
それに、彼女が私をハメようとする理由が分からないよ。
会ったのは数回、それもチラッとお互いに見かけただけだし、それぐらいで敵視されるなんて事ないよね。
う〜ん、やっぱり確証もないのに口には出来ないな。

「神楽、嫉妬に狂う女なんて一皮剥けは欲の塊なのよ。あの人が？　なんて思ってると揚げ足取られるわよ」
私の心を見透かした様にツッキーが言う。
ツッキーがエスパーじゃないかと、時々思うよ。
でも、彼女が私に嫉妬なんてするかな。
向こうは霧生の彼女で、私は野良猫の仲間って位置だよ？

「ツッキー、それでも憶測で口に出来るほど私はその人を知らないし、口にする事で迷惑が掛かる人が居るのに、話せないや」
霧生の顔が浮かんだ。
私が軽々しく口にする事で、彼にまで迷惑かけるのは嫌だよ。
「お人好しなんだから。でも、貴方のそういう所嫌いじゃないわ」
フフフと笑ったツッキーに、私は肩を竦めて笑い返した。
「神楽ちゃん、あのさ。あいつらとの会話、総長に報告しなきゃなんないんだけど」
遠慮気味に聞いてきた周防君には頷いた。
「うん。いいよ」
周防君と佐田君は、護衛としても任務と情報収集する為の任務を兼ね備えて、一緒にいてくれたんだろうねし。
「良かった、助かる」
「こちらこそ助かったよ、今日はありがとう」
ホッとしたように笑った周防君と、その隣に居る佐田君に向かって頭を下げた。

「いいっていいって。俺達で役に立つ事があったら、いつでも言ってくれよ」
あぁ、佐田君、君は良い人だね。
「佐田もたまには役に立つわね」
いや、だからツッキー、そろそろ辛口を止めようか。
「もう、ツッキーったら」
苦笑いで彼女の組んだ腕をポンと叩いた。
「ククク、霜月はいついかなる時も通常営業だよな。じゃあ、俺達そろそろ行くよ」
佐田君は楽しげに笑った後、隣の周防君に目配せした。

「うん。今日は本当にありがとうね」
「いいのいいの。じゃあ、また明日」
周防君は笑って手を振ると踵を返して戻っていく。
「2人共に気をつけて帰れよ」
軽く手を上げ、佐田君も周防君を追い掛けるように去っていった。
「野良猫だと分からないぐらいあの2人って、爽やかよね」
「確かにねぇ」
顔を見合わせフフフと笑った。
彼らの見た目からは、野良猫に入ってるだなんて、本当想像できないんねぇ。