決戦の放課後は、遂にやってくる。
まぁ、本当は決戦と言うほど、大袈裟なものでも無いけどね。
ちょっと格好つけて言ってみたかっただけです。
ツッキーと一緒に体育館裏へとやってくる。
体育館の小窓からは、バスケ部員のバッシュが床の擦れる音が漏れ出ていた。
キュキュ···て、気持ちのいい音だよね。
ターンやクイックで鳴るその音が私は結構好き。
バスケをやったことないんだけどねぇ。

と···冗談はここまでにして。
私とツッキーが体育館裏に付くと、佐田君と周防君の前に壁際に追い詰められ縮こまる様に身を寄せ合う3人の女子生徒達の姿があった。
いつも私を睨みつける強気の態度は、何処にも見受けられない。

「周防君」
声を掛ければ、一斉にこちらに視線が集まった。
昨日擦り剥いた左膝の鈍い痛みに、顔をしかめながらもゆっくりと近づいた。
「神楽ちゃん、足大丈夫?」
私を心配してくれる佐田君に、「大丈夫」と返して微笑む。
安心した様に顔を崩した佐田君と彼女達を見張っていた周防君は気を利かせ、少し離れた場所に下がり体育館の壁へと背を預け彼女達を睨めつける。
牽制の姿勢は崩さないらしい。

「先輩達、なんだか憐れですね」
3人の前に立ったツッキーはそう言って微笑を浮べる。
そんなツッキーに、顔を歪めた睨み返す3人の女子に、いつもの勢いは無い。
私はゆっくりと彼女達の前まで行き、足を止めると無表情で3人の顔を順番に見た。

「今日、呼ばれた理由は分かってますよね」
分かってるからこそ、そんなに怯えてるんだよね。
「わ、分からないわよ」
「そ、そうよ。私達が何したって言うのよ」
「先輩を呼び出すなんて、いい気なものね」
あぁ、まだしらを切るつもりなんですか。
面倒臭いなぁ。
話し合いは短く簡潔に済ませたいんだよね。

「何を悪あがきしてるんだか。貴方達が神楽の情報を鬼夜叉に売ったことはバレてるのよ」
呆れた様に溜め息をついたツッキーは、鋭い視線で彼女達を牽制した。
「わ、私達が話した情報なんて、大したものじゃないわよ」
あ、あっさり認めちゃうんだ。
小物臭が半端ないです。
「個人情報を勝手に流されるのは迷惑なんですよね」
大した情報じゃなくてもね。
悔しげに顔を歪めながらも、私を睨む事を忘れない辺りはブレないなぁ。
「先輩達が鬼夜叉に、神楽の事を話す事になった経緯を詳しく教えてちょうだい」
ツッキーは腕組みをして、3人を見据える。
黙り込む3人、このままじゃ埒が明かないので、挑発してみることにする。

あ、また総長に叱られちゃうかな。