「そうか、分かった」
はぁ? 黒髪〜! そうかじゃないよぉ。
ギョッとして黒髪に顔を向けたら、無表情で私を見ていた。
こ、怖いよぉ。
「僕も賛成〜。この子、可愛いから」
はいはーいと手を上げたのは茶髪君。
賛成しなくていいよぉ。
「俺は反対だ。こんな得体の知れない女を置くなんて冗談じゃない」
赤髪は苛立たしげにそう吐き捨てた。
ごもっともです、それ。
私もそう思うよ。
「え〜いいじゃ〜ん。この子、僕達を見てもあからさまに媚を売るような視線も自分をアピールする様な視線も送ってこないし、いつも打算だけで近付いてくる女の子達とは違うよね」
ね? とこっちを見てくる茶髪君に何言ってんだ? と言う顔をしてしまった。
この状況でそんな視線を送れる女の子がいたら、ぜひ教えて欲しい。
だいたい、そんな面倒な事やりたくないよ。
そりゃ、霧生を含めここに居る4人はかなりのイケメンだけど、それを凌駕するぐらい胡散臭いじゃないかぁ。
そんなのにわざわざ近付こうと思わないよ。
とにかく面倒臭いから、この人達と関わり合いたくない。

「お前、その顔止めろ」
「はぁ?」
霧生の言葉に眉根を寄せる。
「面倒臭えって顔に出てるぞ」
あ、それはごめん。
つい感情が顔に出てたよ。
「ククク、面白い女だな。いいだろう、チームに入れてやる」
黒髪が声を上げ笑いだした。
「い、いえ、それは遠慮します」
色んな意味で有名な野良猫なんかに入ったら、面倒事が怒涛の様に押し寄せてくる気がする。
主に女の子の嫉妬とか妬みとかね。

「やった〜! 決定だね。さっそく自己紹介しようよ」
ちょっと···私の話聞いてたかな?
テンション高めに騒ぐ茶髪君に溜め息を漏らす。
「わ、私、そろそろ帰ります」
このまま居たら、とんでもない事になりそうだもん。
「帰れる訳ねぇよな。大人しく自己紹介しとけ」
立ち上がろうと腰を浮かせた私の肩をグイッと押し留め、ニヤリと笑った霧生。
その笑顔、黒過ぎる。
くそぉ〜イケメンだからって、何しても許されると思うなよ。
「はいはーい! 僕からね。【feral cat】で切り込み隊長をしてる松坂光だよ。光って呼んでね」
愛らしく微笑んだ茶髪君、改め光。
こんなに可愛い顔して、切り込み隊長って···もしかしなくても喧嘩上等! って事だよね。
「は、はぁ」
味気ない返事になったのは、戸惑いから脱出できないせいだよ。
「で、僕の隣でぶすくれてるやつは、西森幸之助(にしもりこうのすけ)、うちの特攻隊長だよ、通称はコウだからね」
光は自分の隣に座るあからさまに不機嫌な顔の赤髪の肩を、ポンポンと軽やかに叩いた。