「この話はあんたたちが付き合う前から水面下で動いてた話で、当時彼女のいなかった秋元さんなら問題ないと思われてた

一応本部長が非公式に…
つまりお酒の席で、結婚を考えてる相手がいるのか課長に探りを入れてみたんだって
縁談の話は隠したままでね

課長もその時は、『いない』と答えたそうよ
まさか上司に向かって馬鹿正直に、”部下に片想い中です”とは言えないでしょ?
で、その『いない』って言う言葉だけで周囲は動き出してしまった

全て順調だったのに、ここにきて課長がプロポーズした恋人がいるって知った上は大混乱らしいよ」

――そんなこと言われても、ねえ…

「このご時世に会社の取り決めで結婚なんてって普通は思うけど
なんでもその令嬢の親がうちのメインバンクの重役で、もう後に引けないんだって
今になって結婚を約束してる恋人がいるとは言えないって」

うちは大企業だから信用第一、だそうよ?

そこで本部長を中心とした上層部が
私と秋元課長はあくまで口約束だけで、正式な婚約者でないと押し切る算段を付けてるそうだ

――なにそれ怖っ!

二人が付き合い始めたばかりであること、
プロポーズされた割に今までと私の態度が変わらないこと、
私が仕事優先の人間であることなどから、
それなら適当なポジションと引き換えに身を引かせようと結論が出たそうだ


――ちょっと!勝手に決めないで!!

それらしい雰囲気を仕事中に出してたら、その方が問題ではないですか!?
本部長~~!!