「このようなみすぼらしい女が王妃になるというのなら国の恥だな」

「ヤナーバル様!お止めください!」
パメラさんが悲鳴を上げた。

「お前さえ現れなければ、ミーナが陛下と婚姻を結び王妃になるはずだったのだ。竜の中でも高貴な赤い髪を持つ美しい姫のミーナが」

憎々しげに私を睨み付け、私を見定めるように視線を送ると「ネズミ以下だな」と吐き捨てた。

ヤナーバル
どこかで名前に聞き覚えがあると思った。

この人はミーナ姫の父方の祖父だ。

似ている。
こうして次々と口汚く罵る言葉も胸を張って威嚇するような態度も。

ヘストンさんの講義の中で竜族の血統の良さを表す指標がその髪の色だと習った。

クリフ様の漆黒は特別な者。
次は赤。しかも燃えるような赤がいいらしい。マルドネス様の赤だ。ミーナ様のストロベリーは少しピンクが入っているのでその次くらいか。

ヤナーバル様のようなくすんだ赤色はもう少し下位になる。ヘストンさんの濃い金髪と同列に近い。
しかし、ヤナーバル様は古くから王家に近い貴族でこの国の中での発言力が大きいらしい。

特に前王の姪をヤナーバル様の嫡男さまが娶りミーナ様が生まれたことでより更なる権力を得ている。

「お前のような女のせいでわしは陛下に呼び出されあろうことか叱責された。こんな理不尽なことがあっていいのか!」

顔を真っ赤にして身体を震わせ激高しているヤナーバル様に感じたことのない恐怖を感じる。

どうやら昨日の出来事でクリフ様に呼び出されたらしい。
あの件で叱責されたのがミーナ様でもそのご両親でもなく父方の祖父だと言うことにふと違和感を感じたものの、それよりも今は目の前で唾を飛ばして私を罵るこの男が怖い。