「今までと似た事件ってことしか。おそらくこの女性は角を曲がろうとした。前から腹部を刺されてるってことは、犯人は前にいた」
「初めからわかってることですね。確かに今まで通りだ」


相変わらず加瀬の嫌味を受け流す果歩は、じっくりと現場を見つめる。


「……加瀬、ちょっと付き合って」


果歩は加瀬の手首を掴んで、現場から離れる。
果歩が向かったのは、一本先にある曲がり角だ。


「何するつもりですか」
「事件再現」


果歩は加瀬を定位置に着かせると、自分も移動する。


「加瀬、歩いて」


そう指示をし、少しずらして自分も角に向かって足を踏み出す。
そして果歩が曲がろうとしたとき、タイミングよく加瀬とぶつかった。


加瀬は思わず果歩の肩を抑えた。


「……もう一回。今度は角ぎりぎりで立ってて」


加瀬から離れ、果歩は同じ位置から歩き始める。
同じように加瀬にぶつかり、同じような場所を掴まれた。


「どっちでも、犯人は女性の肩を抑えてる。……でもまあ、手袋してないわけないんだけど」
「どうして言い切れるんです?」
「これは連続殺人。加えて腹部に刺さったままの凶器には指紋なし。これで手袋してないと思う?」


加瀬は反論のしようがなかった。