「ーーーー俺のこと覚えてないわけ?
あー、これならわかる?」

先生は、メガネを外した。

あーーーー。

あの日、公園にいたヤンキーだった。
絆創膏を渡して、名前をうっかり教えてしまった人。

私は親切心から、絆創膏を渡しただけ。
何がいけなかった?

関わらなければ、良かったのにーーーー。



「あ、思い出してくれた?
嬉しいな。
ありがとうね、絆創膏。
助かったんだけど、あれが原因で奪われちゃったんだよ。
だから、追いかけてる訳。」


奪われたーーーー?
何を?

怖くて涙が滲む。

「泣かないでよ、奪われたんだよ。
ゆあはさあ、奪っていったんだよ」


私が、彼から何を奪った?


「ーーーー私は何も、奪ってないですっ。
だから離してっ」













「ーーーー奪ったじゃん。
俺の心ーー。


奪われたよ、本当見事に奪われたよ。
誰も目に映らないそんな、世界にいた。





ゆあだけだよ、傷だらけの俺に絆創膏渡すとか、めちゃくちゃ怖くて誰も近づかないのにさあ。
近づいたの、ゆあだけだった。


ーーーー好きだよ。
怖がらしたいわけじゃない。
泣かしたいわけじゃない。



泣くなよっ、ゆあっ」



私、泣いてるのーーーー?