そう思い、隣に誰もいない窓際の後ろのほうの席にカバンを置いて座る。


とりあえず、授業が始まるまで、テキストでも眺めてようかな。


カバンの中から塾のテキストとペンケースを取り出し、机の上に置く。


するとその時、横からいきなり誰かに声をかけられた。


「あれ……? もしかして、藤宮さん?」


ドキッとして振り向くと、そこに立っていたのは、星川学園の制服を着た背の高い男の子。


あれ、この人は……。


一瞬誰だっけ、なんて思ったけれど、その優しい笑顔を見て、すぐに思い出した。


「ひ、氷上、くん……?」


ビックリした。まさか、こんなところで会うなんて。


彼の名前は氷上遼生くん。


中学の同級生で、当時同じ吹奏楽部に所属していて、一緒にアルトサックスを吹いていた仲間だ。


男の子が苦手だった私が唯一まともに話せる男子だった。