薫子に自分から電話をかけるのは初めてだった。
ドクンドクンッと心臓が不快な音を立てて鳴り続ける。
「もしもし」
平然と電話口にでた薫子の声はどこか弾んでいる。
「梨沙が電話をかけてきてくれるなんて珍しいね。私、嬉しい!親友同士はこうやっておしゃべりするのが普通だもんね。そんなに気を遣わなくてもいいのよ?いつだって暇なときに電話をかけてくれて。私もこれからはかけるから」
まくしたてるように一方的にしゃべり続ける薫子はどうしてあたしが電話をかけてきたのか全く察していない様子だ。
「どういうつもり……?」
怒りを押し殺してそう切り出す。
「それ、どういう意味?」
「八木さんのこと。どうしてあんなにひどいことを言ったりしたの?」
『ご飯食べる時も車椅子なんて可哀想ですね。梨沙もいつも言っていたんですよ。可哀想な人が施設にいてその人の話し相手になってあげてるって』
『もう歩けないなんて本当可哀想。お気の毒様~!』
薫子の言葉に八木さんはプライドや尊厳をひどく傷付けられたに違いない。
確かに膝を痛めていたのも車椅子に座っていたのも事実だ。
でも、八木さんは陰ながら努力してリハビリを頑張っていたし、歩く希望だって捨ててなどいなかった。
八木さんは決して可哀想な人ではない。
そんなこと思ったことは一度もないし、ましてや薫子に話すはずもない。
それなのに、どうしてあんな言葉を放ったりしたんだろう。
ドクンドクンッと心臓が不快な音を立てて鳴り続ける。
「もしもし」
平然と電話口にでた薫子の声はどこか弾んでいる。
「梨沙が電話をかけてきてくれるなんて珍しいね。私、嬉しい!親友同士はこうやっておしゃべりするのが普通だもんね。そんなに気を遣わなくてもいいのよ?いつだって暇なときに電話をかけてくれて。私もこれからはかけるから」
まくしたてるように一方的にしゃべり続ける薫子はどうしてあたしが電話をかけてきたのか全く察していない様子だ。
「どういうつもり……?」
怒りを押し殺してそう切り出す。
「それ、どういう意味?」
「八木さんのこと。どうしてあんなにひどいことを言ったりしたの?」
『ご飯食べる時も車椅子なんて可哀想ですね。梨沙もいつも言っていたんですよ。可哀想な人が施設にいてその人の話し相手になってあげてるって』
『もう歩けないなんて本当可哀想。お気の毒様~!』
薫子の言葉に八木さんはプライドや尊厳をひどく傷付けられたに違いない。
確かに膝を痛めていたのも車椅子に座っていたのも事実だ。
でも、八木さんは陰ながら努力してリハビリを頑張っていたし、歩く希望だって捨ててなどいなかった。
八木さんは決して可哀想な人ではない。
そんなこと思ったことは一度もないし、ましてや薫子に話すはずもない。
それなのに、どうしてあんな言葉を放ったりしたんだろう。



