「あらっ、この班はどうしちゃったの?早く始めなさい」

不穏な空気に気付いた先生があたし達の元へ歩みより声をかけてきた。

「葛生さん、どうした?具合でも悪い?」

薫子の後ろに立ち尽くすあたし達と薫子を交互に見つめた後、先生は椅子に座る薫子のそばへ行き優しく声をかけた。

すると、薫子は予想外の反応を見せた。

なぜか薫子の肩が小刻みに震えている。

「く、葛生さん?どうしたの?」

「先生……」

さっきまで笑顔を浮かべていたはずの薫子が涙を流している。

薫子は先生の目をまっすぐ見つめてこういった。

「先生、私は調理実習に参加できないんです」

「どうして?」

ボロボロと涙を流す薫子に背筋が冷たくなる。

何かとんでもないことが起こりそうな気がして心臓がバクバクと震える。

「私……やっちゃダメなんだって。仲良し3人でやりたいからって……。仲間外れにされてるんです」

ひゅっと喉の奥がつまった。

目の下が引きつり、心臓が不快な音を立てて鳴り続ける。

「ちょっと、それってどういうこと?」

「前から仲間外れにされていて……でも……もう限界です……」

涙は時として最強の武器になる。

少なくとも、この時の薫子には。

薫子の言葉に眉間にしわを寄せた先生はあたし達3人に厳しい視線を向けた。