「私だって本当はこんなことしたくないの。でも、みんなの役割分担と工程を時間をかけて一生懸命作った私の気持ちをあなたたち3人は踏みにじった。そんなの到底許されることじゃないでしょ」

「そ、そんなこと言わないで。薫子が分担とか考えてくれたことには感謝してるよ。でも、その中身が――」

「いいの。結局、私がつくったものが気にくわないってことでしょ。私を仲間外れにして3人で楽しく作ったら?本当はそうしたいんだろうし」

薫子は笑顔を崩すことなくそう言うと、足を組みあたしに背中を向けた。

私を仲間外れにして?あたし達、そんなこと一言も言ってない。

それに、4人で一緒にやろうと思っていたから椅子を片付けてってお願いしただけなのに、どうしてそうなっちゃうの?

どうしてそういう考えに至ってしまうの?

何なのこの子は。

日本語は通じているのに、言葉が通じていないみたい。

ここまで会話が噛み合わないなんて信じられない。

呆然しながら彩乃とエレナに視線を向ける。

二人はあたしと同じ表情を浮かべていた。

驚愕と怒りと呆れの入り混じった顔。

理不尽な言葉をぶつけられているのに怒ることも許されない。

ここで怒りに任せて怒鳴りつけてしまえば、今度は生徒指導室に呼び出されるだけでは済まないかもしれない。

進路に影響が出たら嫌だし、彩乃は部活にだって影響を及ぼすかもしれない。

あたし達が薫子に逆らえないことを彼女は本能的に知っている。

今、優位に立っているのは間違いなく薫子だ。

あたし達は言葉を失って、薫子の背中を見つめたままただただ立ち尽くす。