トモダチ地獄～狂気の仲良しごっこ～

「何よ。その目。あたしが憎いんでしょ？だったらやり返してみなさいよ。ここから落とせば？そうすればスッキリするんじゃない？」

右足のかかとが階段の段差に触れる。

あと数センチ踏み外せば、目的達成だ。

真緒に会う数分前、あたしはこう考えた。

ここから足を踏み外して落ちたことにすればすべてが丸く収まるんではないかと。

レギュラーを外されてしまったという事実は変わらないし、両親に怒られるのも目に見えている。

けれど、あたしがケガをしたとなれば父の知り合いのスカウトマンには『娘は怪我をしたせいで出場ができなかった』と父は言い訳をできるだろう。

父の面目を保つことはできる。

レギュラーを外されたからって、次の大会も外されると決まったわけではない。

あたしの悪口を言っていた後輩二人を次こそ見返してやる。

……ここから飛び降りてケガをすることは容易だ。

でも、よくよく考えれば誰かから故意に突き落とされたとしたほうが体裁はいい。

誰かのせいにしてしまえばいい。

目の前にいる真緒があたしを突き落とせばいい。

そうすれば、あたしは真緒への昔の負い目ももう感じずに済む。