薫子の頭が壊れた人形のように左右に揺れる。

エレナが髪を掴んだまま思いっきり引っ張ると、薫子の体が椅子から転がり落ちた。


背中を打ち付けて顔を歪める薫子なんてお構いなしにエレナは両手で薫子の髪を引っ張ったまま体をロッカーの前まで引きずった。

広い場所まで移動すると、薫子の上に馬乗りになり顔を平手打ちする。

「アンタにあたしの何がわかるのよ!!」

エレナは狂ったようにそう繰り返しながら薫子のことを叩き続ける。

あたしはその様子をただ呆然と眺めることしかできない。

止めよう、とは思った。

でも、体が全くいうことを聞いてくれない。

教室のどこからか悲鳴が聞こえてくる。

「エレナ!!やめなって!!それ以上はマズいって!!」

その悲鳴にハッとしたのか、彩乃が弾かれたように駆け出して二人の仲裁に入った。