できるだけ傷付かずに心穏やかに生きていきたい。

わたしの願いはそれだけだ。

「説明は以上です。えっと、ひとつお願いがあります。今月のおススメ図書の紹介を図書館だよりに載せたいと思います。クラスごとに2人で作成することになるんですが……今回担当してくれる方、いますか?」

資料の年間予定に2か月に一回、図書館だよりを発行していると書かれている。

「今回は締め切りが短いのでちょっと大変だと思うんですが、誰かやってもいいよ、って人いませんか……?」

川崎さんが図書室を見渡して困惑したような表情を浮かべた時、

「それ、委員長にやってもらうわけにはいかないんですか?」

わたしの後ろに座っていた1年生の男子が声を上げた。

「えっ……?でも、わたしは委員長の仕事が……」

「俺、部活があるから無理です!」

「あたしも予備校があるから、忙しくて無理です」

「俺も。そういうの得意じゃないんで」

全員が一斉に発言し始めたせいで図書室の中が騒がしくなる。

「ちょっ、ちょっと静かにしてもらえますか?」

川崎さんがそう促しても、図書室内の紛糾は止まらない。

「そもそもそんなの発行しなければよくない?そんなのがあるなんて知ってたら図書委員やらなかったし」

「だよね。あたしも絶対やりたくない」

「ちょっと、静かにして!お願いします!」

川崎さんが今にも泣きだしそうな叫び声をあげる。