「ん?」

彼――藤原奏多は切れ長の目を細めて首を傾げる。

「奏多くんは知らないんだっけ?小松さんは……ほらっ、あれなの」

「あれって?」

「だから……小松さんは……」

クラスメイトは言葉を選んでいるのか困ったように視線を宙に漂わせる。

ズキッと胸が痛んだ。わたしは人を困らせる天才だ。

彼がじっと私を見つめる。痛いほど間近で注がれる視線に息苦しさを感じる。

その目を見つめ返すことなく、わたしはスッと椅子から立ち上がった。

「ちょっと待――」

「――あ~、奏多くん、また同じクラスじゃん!!」

歩き出そうとするわたしに手を伸ばす藤原くん。

藤原くんの意識が声をかけてきたクラスメイトに向いた時、わたしはそのまま彼に背中を向けて歩き出した。

「おい!」

藤原くんの声が背中にぶつかる。