「ねえ。

アッシュ」とミリアン。

錬金術師ミリアン・カーバイドだ。ピンク色の髪をした女の子です。

「夏の嵐よね」

ここ王都では夕方、激しい雨が降っています。
雷雨でした。

初夏から夏にかけて雷雨は起こるのでした。
続ける。

「実験中のフラスコ瓶のようね」

とミリアン。

冷静に雨雲を見る。

「雷とは電気かもしれないな」とアッシュ。錬金術師。
「ライデン瓶ね」とミリアン。

ライデン瓶というのは電気を蓄える金属の瓶のことです。

雷誘導用の避雷針とライデン瓶。
それらが錬金術師たちが用意出来るほぼ最良の道具であり、したがって雷への対応策などはほとんど無かった、とそういってもいいのでした。