「なぁ、宮前、選択肢は二つだ。
一から二人の関係をもう一度スタートさせるか、恋人だと話してスタートするか。」

「他人になる選択肢はないんですか」

「そんなもんあるわけないだろ。
好きな女は何があっても手放すなよ。彼女だって忘れたくて記憶をなくしたわけじゃない。
辛いのは一緒だ」

「先生ならどちらを選択しますか」

「俺か?
俺は恋人だと話すよ。
何があっても手放したくないからな。他の誰かに目を向ける姿は見たくない。

もう一度自分を選んでくれるのか自信ないからな。

忘れらたことより今、目の前の自分を見てくれないことが何よりも辛いかな。」

「俺を忘れて思い出せないことに彼女は苦しみませんか…」

俺の質問に先生は部屋のすみに泣きそうな顔で聞いていた看護師に目を向けた。