「外傷性健忘。
彼女の場合は逆行性健忘だ」

服部先生は俺を外科医局に連れてくるとそう説明した。

目を覚ました彼女は

「長田先生、佐久間先生おめでとうございます。あー羨ましいなぁ。私も早く素敵な彼氏欲しいです」
とニッコリ笑い、俺をみて

「担当の先生ですか?
外科に佐久間先生以上のイケメンいたんですね。」
とぽっと頬を染めた。

服部先生が彼女に話しかける

「残念、岡本さんの主治医は俺。このイケメン宮前先生は放射線科、キミの頭の写真とる先生。いくつか質問するから答えてくれる?」

彼女の記憶は佐久間が長田にプロポーズした直後、俺たちが出会う前でとまっていた。

彼女の記憶には俺が存在していなかった。