「今何描いてんの?」
「こないだは桜描いたよ。次何描こうかなーって悩んでるところ」
「人は描かないの」
「うーん、描きたいけど……描いたらさ、全部思い出だって認めないといけなくなっちゃうじゃない?」
うまく笑えたか自信がなかった。多分泣きそうだってバレている。
「わたし似顔絵下手だから、頑張って描いてもあんまり似ないし」
下手なつけ足しに、渡辺くんは穏やかに笑った。
「いいじゃん似なくても。めっちゃ美化して描いてもらえたら嬉しいかもよ」
そうだね、と答えたはずだった。そうだよねと頷いたはずだった。
でも彼の顔は晴れないままで、わたしはやっぱりうまく笑えていないらしい。
わたしにはなくしたくないものがたくさんあるのに、もうどんどん忘れていっていて、隣にはきみしかいない。
……きみがいてくれたら、それでいい。きみだけはなくしたくない。
そう思うのは必然か、それとも。
「こないだは桜描いたよ。次何描こうかなーって悩んでるところ」
「人は描かないの」
「うーん、描きたいけど……描いたらさ、全部思い出だって認めないといけなくなっちゃうじゃない?」
うまく笑えたか自信がなかった。多分泣きそうだってバレている。
「わたし似顔絵下手だから、頑張って描いてもあんまり似ないし」
下手なつけ足しに、渡辺くんは穏やかに笑った。
「いいじゃん似なくても。めっちゃ美化して描いてもらえたら嬉しいかもよ」
そうだね、と答えたはずだった。そうだよねと頷いたはずだった。
でも彼の顔は晴れないままで、わたしはやっぱりうまく笑えていないらしい。
わたしにはなくしたくないものがたくさんあるのに、もうどんどん忘れていっていて、隣にはきみしかいない。
……きみがいてくれたら、それでいい。きみだけはなくしたくない。
そう思うのは必然か、それとも。


