終わる世界で、きみと恋の埋葬

……ああ。間に合え。間に合え。間に合え。お願いだから。間に合え、わたし。


両親みたいに、かつての思い出が詰まった家や写真や、煙草や花を残していかない。残ったひとに別れを突きつけるものは、少ない方がいい。

見るたび思い出して、自分を責めて、苦しいから。


浜辺にどうにかたどり着いて、砂に足を取られながらばちゃんと正面から海に倒れ込んだとき、耳元でごぽりと一際大きい水音がした。


お腹を水面に強かに打ちつけたはずなのに、プールで飛び込みに失敗したときによくある、板のような水の圧迫感がいつまでもやってこない。


もう自分の体なのか海なのかわからなかった。


息が荒い。心臓がうるさい。冷たいはずなのに、全然温度なんて感じられない。


まつ毛がしとどに濡れている。何もかもが濡れそぼって、あやふやで、きらめいて。そうして消えていく。


ごぽり、ごぽりと聞こえるたびに少しずつ体が軽くなって、乱反射する水滴がそこかしこで眩しく弾けた。


もう腕も足も首も動かないけど、視界はまだひらけている。


まるで現実味がなくて、ゲームのエフェクトみたいで、どこまでもきれいで、きれいで。


きれいだなあ。きれいでよかったなあ。お水でよかったなあ。……戻って、こられるかなあ。


そんなことを、のんびり考えて——きれいだから、ああ、わたしは消えるんだと思った。この恋と、わたしを儚くするときが来たのだ。