終わる世界で、きみと恋の埋葬

はじめ、失えるものは何もないなんて言っていた、でも、失うものはきみひとりでたくさんだと呟いてくれた、あの寂しがりやの飛鳥くんに失わせるものを、わたしが勝手に増やしたくなかった。


喉がひりつく。しゃくり上げるのを人ごとみたいに聞きながら、ひたすら足を前に出す。


視界がぼやけた。走っているせいだけでなく息が荒い。鼻が痛い。嗚咽が漏れる。


いやだ、いやだ、こわい、でも、あすかくんだけは、まきこまない。


……自分が何に泣いているのか分からなかった。


あすかくん、と、自分と同じ名前を呼ばないように押しこめることに必死で、無理に食いしばった歯が痛い。


いやだ、こわい、あすかくん、たすけて。


あすかくん、あすかくん。呼べない名前を心の中で呼ぶ。


いたい。痛い。


絞るような痛みが、苦しさが、あたたかいはずの大好きな三文字が、わたしに心のありかを教えてくる。


いたい。いやだ、でも。


足がもつれた。びしゃり。立ち上がる。走る。びしゃり、びしゃり。ごぽり。


春を迎えた雪だるまはこんな絶望的な気分なのかなあ、なんて頭の隅で思う。