『好きな人とかいないの?』
定番のからかいに、『ばーか、好きな人とかいたらおまえと会ってないわ』って笑ってたけど。
嘘だよ。好きな人いたよ。
……おまえだよ。
なんでうまく言えなかったんだろう。
好きだから、めちゃくちゃ忙しくても時間を作ったし、バカなかけ合いも楽しかったし、荷物持ちだって何時間も付き合ったんだよ。
好きじゃなかったら普通に帰ってるわ。
俺そんなにいい奴じゃないし、これでもそんなに暇じゃないし、あと好きでもないのに毎回褒めるのって結構めんどくさいし。
でも、あいつは決して俺を、随分前に憧れのデートコースだってまくし立てた映画館とか水族館とか猫カフェとかに誘おうとしなかった。
いつもいつも、買い物かストレス発散のカラオケか、ただの食事に誘った。
たとえ家に誘われたって、それで勘違いできるわけがない。
諸々に誘われなくなってからも、幸せそうなあいつに横槍なんて入れられなかった。
だから、言い訳をたくさん重ねて。目を逸らして、ごまかして。俺は。
「ごめん、ちょっと本当にブーケトスは困るわー」
無理矢理おどけて、なんとか通話を終わらせる。
ごめん。まだ無理だ。
流石に今はまだ、お前からの花束はもらえない。
まだ、結婚とか、恋人とか、そういうの、考えたくない。
——明日、俺の好きな人は、 誰かの花嫁になる。
定番のからかいに、『ばーか、好きな人とかいたらおまえと会ってないわ』って笑ってたけど。
嘘だよ。好きな人いたよ。
……おまえだよ。
なんでうまく言えなかったんだろう。
好きだから、めちゃくちゃ忙しくても時間を作ったし、バカなかけ合いも楽しかったし、荷物持ちだって何時間も付き合ったんだよ。
好きじゃなかったら普通に帰ってるわ。
俺そんなにいい奴じゃないし、これでもそんなに暇じゃないし、あと好きでもないのに毎回褒めるのって結構めんどくさいし。
でも、あいつは決して俺を、随分前に憧れのデートコースだってまくし立てた映画館とか水族館とか猫カフェとかに誘おうとしなかった。
いつもいつも、買い物かストレス発散のカラオケか、ただの食事に誘った。
たとえ家に誘われたって、それで勘違いできるわけがない。
諸々に誘われなくなってからも、幸せそうなあいつに横槍なんて入れられなかった。
だから、言い訳をたくさん重ねて。目を逸らして、ごまかして。俺は。
「ごめん、ちょっと本当にブーケトスは困るわー」
無理矢理おどけて、なんとか通話を終わらせる。
ごめん。まだ無理だ。
流石に今はまだ、お前からの花束はもらえない。
まだ、結婚とか、恋人とか、そういうの、考えたくない。
——明日、俺の好きな人は、 誰かの花嫁になる。


