ただずっと、君が好き

「謝らないでよ」


俺はどうしていいかわからなくなって、自分のつま先を見下ろした。


「二人の噂はいろいろ聞いた。その中で、まだ付き合ってない、ただの幼なじみだっていう不確かな情報が耳に入ったから、体育祭のときに近付いたんだ」


あのとき近江がひなたのところに行ってたのは、そういう理由だったのか……
いや、あれはお題の人がひなただったから、あそこにいたはず。


……待てよ?
たしか近江は、お題を持ってゴールしなかったから、失格になったんだ。


あのお題を勘違いしたとか言ってたけど、あれは嘘だったのか?


「あのとき、矢野君は仲のいい女友達というお題で、ひなたちゃんのところに来た。そこで二人が付き合ってないって確定して、僕にもチャンスがあるのかなって」


俺の疑問を言葉にする前に、近江が話を続けた。
俺は気になったことを聞くのをあきらめる。


……だから、デートに誘ってきたのか。


近江は俺が思っていた以上に行動派らしい。


「……なんて、そう思ってた過去を今すぐにでも消し去りたいよ」


はっきりとは言わないけど、なんとなく予想がつく。


「そういうわけで、正確には好きだった人、かな」


その結論に至ったことに驚いて、俺はまた振り向く。


「そんな簡単に諦められるのか?」
「なんて言えばいいのかな……この子と付き合えたら楽しいだろうな、て感じだったんだ。ひなたちゃんは、本当の自分を隠してしまう僕のことを肯定してくれたし」


それを好きと言うのでは、と思ったけど言わないでおこう。
これ以上強敵が増えては困る。