緊張から震える手で、聖にはちまきを巻く。


「……できた」
「サンキュ。よし、行こうぜ」


振り向いた聖はいつも通りで、緊張はどこかに消えてしまった。
そして私たちは話しながらグラウンドに行った。


「あ、沙奈ちゃん!先に行ってたんだね」


私がはちまきを巻いてもらってるとき、見かけなかったけど、先に行ってたとは……


「うん。だって、そうしたら」
「何言おうとしてるのかな、有川さんは」


沙奈ちゃんが説明しようとしたら、聖がそれを止めた。
本当、二人は仲がいいなあ。


「……聖、沙奈ちゃんのこと好きなの?」


なんとなく思ったことを言っただけなんだけど、二人はものすごい剣幕で私を見てきた。


「ひなたちゃんがそれ言っちゃうかあ」
「え」
「一周回って呆れた……」
「え、なんで!?」


理由を聞きたかったけど、隊ごとに並ぶよう指示が出た。
私は納得いかなかったけど、諦めて列に入った。


高校の体育祭の練習は、応援がメイン。
隊ごとに練習が始まる。


慣れない声だしに、慣れないダンス。
私は戸惑いながらもなんとか形にしていった。


「頑張ってるな」


休憩に入ると、聖が声をかけてきた。
その手には水がある。
私はそれを受け取り、喉に流す。


「大変だよ……応援団はすごいね」