「よしよし、盛り上がってるな」


いつの間にか私の隣に立ってみんなの様子を見ている聖が、嬉しそうに笑っている。


「もしかして、聖が提案したの?」
「有川の願望が聞こえたからな。それに……いや、なんでもない」


さすが聖と思ったのに、何、そのはっきりしない感じ。


「ひーなーたちゃん!」


突然後ろから体当たりされて、私はバランスを崩す。
だけど聖に支えられた。


「ありがとう、聖」
「ごめんね、ひなたちゃん……私、はちまきのことが嬉しくて、つい……」


沙奈ちゃんは反省してるようで、落ち込んでるように見えた。


「大丈夫だよ。そのリボン、似合ってるね」


既に結び方を変えていた沙奈ちゃんの頭の上には、綺麗にリボンが作られていた。
沙奈ちゃんはまた笑顔に戻る。


「ありがとう。ひなたちゃんもやろ?」
「うーん、私はいいかな」
「えー」


沙奈ちゃんとお揃いにはしたいけど……
ちょっと恥ずかしい。


「あ、じゃあ、ネクタイ?猫耳?手首に巻く?」


どうしても私にちゃんとはちまきを巻かせたくないのか、沙奈ちゃんはいろんな提案をしてくる。


だけど、どれもしない。
せっかく聖が結んでくれたから、解きたくない。


「このままにするよ」


沙奈ちゃんは口を尖らせているけど、あえて何も言わないでおく。
言ったら、その結び方にされそうな気がして。