19時、海風が頬を撫ぜる丘でさよならを。

「大阪」
「都会だなぁ。あれ?でも大阪弁ってもっとこう、なんとかやーん、とかなるやつだろ?」
「大阪は1年しかいなかったから。その前も、その前も、いろんなとこ住んだけどだいたい1、2年で引っ越すから、言葉なんか」
「転勤族ってやつかぁ。大変そうだけど、いろんなとこ行けていいな」
「良くないよ!」


自分で振り返ってみても、もう何回引っ越したか覚えてないくらいだった。

したくない話をわざわざ思い返して話した挙句、「いいな」なんて言われて、私は思わず大きな声をあげてしまった。


「あ、ごめ…俺、島から出たことないんだ。だから羨ましくて。そうだよな、そんな何回も引っ越してたら、やっぱ大変だよな」
「う、ううん。私こそ、大きな声出して、ごめんなさい」
「いやいや、俺が本当にごめんだから」
「ううん、気にしないで、大丈夫だから。あっ、そういえばさっき、うちの中学生徒多いって言ったでしょ? 私すごく少ないと思ったんだけど、違うの?」