早口ではないけど、前のめりな話し方でグイグイ持っていかれる感じがした。

いきなり下の名前で呼ぶとか押しが強いのを除けば、低くて、深くて、優しい声。

怖い人って感じは、もうあんまりしない。


でも今度は、邪魔をされた不快感みたいな感情が湧いてくるのがわかった。

こうなってしまって、この人が帰るまで死ねないのだから。

コンクリートの地面は老朽化してひび割れまくっている。

その割れ目から勢いよく生える雑草をかき分けてがさごそしている背中を、ため息とともに恨めしく見つめた。