「あ、ごめん」
「違うの、なんかありがと。ほんとそれだから。あはは」
「だよなぁ。ははは」
「あはは」
「祈梨」


ひとしきり笑い合った後、低い声で純がまた私の名前を呼んだ。


「転校はともかくさ、何かあったらすぐ俺んとこ来いよ」
「ありがと。でも私、純の家知らないよ」
「あの展望デッキ登る手前の道、海沿いに灯台の下回ればわかるよ。来栖ってでっかい看板あるから」
「わかった。ホントありがとう」
「じゃあな」
「うん」

私は純が見えなくなるまで、その後ろ姿を見送った。